日本の歴史

外国人の見た戦国時代の日本

論文要旨

 本研究では、室町時代に日本に訪れた外国人のみた日本の社会について彼らの書簡から考えていく。当時の日本社会を描写した書簡が、日本に残された日本人による史料では決して記されることのない多くの特徴を指摘しているという点に注目する。すなわち、外国人である彼らだからこそ、極めて客観的に日本の社会状況を書き表すことができたという画期性を重視する。

 本研究では、まず16世紀に初めて来日することになった宣教師らによって残された史料から、これまで語られてきた日本社会とは違った新たな様相を明らかにしていくことを目的としたい。宣教師らが残した原文の史料には彼らが実際に日本を訪れて目の当たりにしたものの数が非常に少ないという点と、それらが日本語に翻訳されて使われる場合に元々の言語であるポルトガル語やスペイン語から直接日本語として翻訳されたものは少ないという問題を克服することもまた1つのねらいである。そして、次に宣教者らの書簡がキリスト教的な先入観を含むという問題がある。本研究で新たに提起したいのは、当時、宣教師らと同様に来日したポルトガル商人に注目する方法である。とりわけ1546年から1547年にかけて来日したポルトガル商人のジョージ・アルバレスによって記述された書簡に注目したい。日本に関する描写は、あらゆる宣教師による叙述とは異なり、いわゆる“日本の宗教=悪魔崇拝”とみなすような偏見が見られないのである。これはまさにアルバレスが宣教師ではなく商人という性格をもった存在であったからである。アルバレスは自らの叙述において日本の宗教についてより客観的な描写をしている。これらを踏まえて本研究では、16世紀に宣教師と同様に日本へ訪れ、彼ら宣教師とは異なった観点から当時の日本社会を書き表したポルトガル商人の1人であるアルバレスの書簡に注目し、彼の記述の画期性を意識しながら、多くの宣教師たちの書簡と比較しながら、より豊かに当時の日本社会の実態を明らかにしていきたい。これが第二の視角である。

» 参考資料:外国船に乗って来日したヨーロッパ人(1542年~1562年)

著者紹介:Hendrik Lindelauf

 著者:Hendrik Lindelauf(ヘンドリッキ リンデラウフ) 出身国:ブラジル

 2007年9月 セアラ州率大学社会科学部 卒業

 2008年4月 東京学芸大学日本近世史研究 入学(国費留学生)
 2009年3月 東京学芸大学日本近世史研究 卒業

 2009年4月 東京学芸大学日本史修士課程 入学
 2013年3月 東京学芸大学日本史修士課程 卒業

目次

序章

第1章 1549年~1562年に来日した外国人とその紹介

第2章 宣教師のみた日本社会 

第3章 ポルトガル商人アルバレスがみた日本社会

終章

あとがき