骨喰丸が笑う日 第十八回
骨喰丸が笑う日 第18回 森 雅裕
五右衛門が戻ってきて、薄汚れた軍刀を差し出した。
「調達してきましたぜ。どこからどうやって手に入れたかは訊かないでください」
抜いてみると、あたりまえの話だが、過酷な環境にさらされた刀身は錆びている。
「斬れ味悪そうだなあ。こんなもんで斬られると痛えぞ」
その抜き身をひっさげ、八七橋は釣谷大尉を廃墟の外へ促した。
「出ろよ、大尉」
「いかれてる。お前たちはいかれてる」
「うるさい。怒鳴り込んできたのはそっちだろうが」
雨は降っていないが、付近は闇である。空を覆う雲に明るい部分があるのはどこかの火災を反射しているからだ。
足場の広い場所を選び、八七橋は軍刀を構えた。先祖に刀剣関係の職人がいたためもあり、真剣の扱いには慣れている。中野学校の格闘技訓練は空手が主流だが、剣道の心得がある者も多く、八七橋の刀術も実戦本位である。
釣谷も軍刀を正眼に構えたが、斬り合いにはまったく慣れていない。軍刀は威張り散らすための道具にすぎず、相手も武器を持っている場合はどうすればいいのか、途方に暮れていた。
八七橋は無造作に間合いをつめた。釣谷は悲鳴のような気合いを発して、軍刀を振り上げた。八七橋は鐔元を打ち、叩き落とした。切っ先を喉元に突きつけると、釣谷は瓦礫につまずいて転び、叫んだ。
「待て。待て待て。落ち着けっ」
「落ち着いて喧嘩ができるか。撤退路は日本兵の死体であふれ、すでに軍隊としての秩序もない。今さら死体が一つ増えたところで、誰も気にとめない」
「待ってくれ。撤退部隊に米を配っている場所を教える。ここから東に一キロほど行くと赤い屋根の学校跡地がある。そこが糧秣交付所だ」
「ふうん。そうか」
八七橋は軍刀を相手の眼前から引き下げ、背を向けた。釣谷が背後から襲ってくるようなら斬り殺そうと思うほど気持ちが荒んでいたが、何事も起こらなかった。
翌日、部隊の兵たちと交付所へ行ってみると、敗残兵の行列ができていた。立っていられず、座り込む者も多い。
ここでも輜重兵の横暴がまかり通っていた。
「コラコラ。臭いからあまり近寄るな」
「ほれ、オンボロ少尉、さっさと飯盒を出せや」
「こいつら、負けて逃げ帰ったくせに食い意地だけは張ってやがる」
血色のいい伍長や上等兵がボロボロの将校を嘲笑しているのである。そればかりではない。列にはインド人やビルマ人の通訳も並んでいたが、
「お前らにやる食い物はない」
と、追い返されていた。これには八七橋も堪忍袋の緒が切れかかったが、
「八七橋さん」
相笠曹長が間延びした声をかけ、機先を制した。彼らはどちらかが熱くなると一方がなだめ役に回る。いつの間にか、そんな関係が出来上がっている。
「アーシャは来なくて正解でしたなあ」
実人数の分しか米をくれないので、部隊全員で並ぶべきなのだが、インド人で、しかも女であるアーシャはどうせ不愉快な扱いを受けるだろうから、並ぶのをやめさせたのである。綿貫は「少将が兵卒ごときと一緒に並べるか」と自ら拒否した。
「八七橋さん。ここはおとなしく配給を受けましょうや。囚人部隊には囚人部隊の喧嘩のやり方がありますぜ」
相笠は意味ありげにニヤリと笑った。何か企んでいるようだ。
喧嘩は彼らにまかせるとして、八七橋は肩を落として歩く通訳たちに声をかけた。
「残念ながら、日本軍はもうお前たちを必要としていない。さっさと逃げないと、もっとひどいことになるぞ」
そう忠告し、彼らの飯盒に自分の米を分け与えた。
野営地へ戻る途中、八七橋は振り返って、部隊の顔を見回した。
「うちのろくでなしのゴロツキども、何人か姿が見えないようだが」
すぐうしろにいた三文が、低いが明るい声で言葉を返した。
「八七橋さん。しばらく俺たちのやることに目をつぶっててください」
「何をやる気だ?」
「最前線を知らない輜重兵に戦争の恐ろしさを教えてやります」
疲弊した顔が悪戯っぽく輝いている。三文は小説家志望とやらで、この陰惨な地獄を人間観察の場と心得ているような男である。何かネタはないかと常にアンテナを立てている。
「なるほど。横柄な輜重兵の寝床がどこなのか、調べに行ったか」
「へへ」
兵たちは日暮れには戻ってきたが、翌日の夜明け前、また数人が連れ立って出ていった。八七橋は気づいていたが、どこへ何をしに行くのかは尋ねず、放っておいた。もともと、彼らは八七橋の部下でもない。
雨は降っていない。木陰でアーシャが綿貫の靴を修理している。はがれた靴底を木の皮の繊維で縛り付けていた。
「そんなものじゃ長持ちしないだろ」
「かわりの靴を手に入れなきゃなりませんね」
街道に死体があふれているとはいえ、装備を剥ぎ取られ、まともな靴など転がっていない。
「靴は撤退の生死にかかわる。わが部隊に調達係の五右衛門ありといえども、よその兵隊から靴泥棒はできないよなあ」
「やさしいんですね、意外と」
「今のうちだけだ。これから先は友軍といえども生き残りをかけた戦いになる」
アーシャは明るくなった空を樹林の間から見上げた。清々しい朝の空気ではない。ねっとりとした空気の中を蚊やブヨが飛んでいる。
「皆さん、朝早くからどこへ行ったんでしょうか」
「飯盒と米を持っていったようだから、飯炊きだろう」
「夜が明けたら炊飯禁止のはずですが」
「だからこそ、さ」」
八七橋は突き放すように、いった。囚人部隊は決しておとなしい人間の集まりではない。任務に支障がない限り、勝手にやらせようと八七橋は考えていた。
相笠が崖下から登ってきた。この男は兵たちと同行せずに泰然自若としているが、むろん部下がどこで何をしているかは知っている。
「クソしに谷へ下りたら、重機や山砲がゴロゴロ捨ててあった。輸送担当の後方部隊が前送せず、放棄したようですな」
「任務を果たさずに後退したのか。前線でいくら補給を要請しても届かんわけだ」
「近くで野営してる連中に聞いたら、宮崎支隊が放置された弾薬を回収しながら撤退したそうですよ。支隊は傷病兵を担架輸送していましたから一度には運べず、次の野営地まで何往復もしたらしい。崖下でぶっこわれている武器までは運びきれなかったようだ」
「そうした武器弾薬の一部でもコヒマに届いておれば、むざむざとインパール街道を敵に突破されることもなかっただろうに。宮崎閣下の怒る顔が目に浮かぶなあ」
そんな話をしていると、飛行機の爆音が聞こえてきた。だいぶ距離があるが、数回の爆発音も空気の震動となって伝わった。
「あの人たちですね」
アーシャが呟いた。察しはついた。囚人部隊の兵たちはこの朝、輜重兵の野営地近くで炊飯し、その煙で敵軍の飛行機を誘導したのだ。
綿貫が枝葉を重ねて作った屋根の下から現れ、
「やかましいのう。空襲が目覚ましがわりとは、今日も殺伐とした一日になりそうだな」
ぼやきながらアーシャが修理した靴を手に取ったが、出発まで履く必要はないから、ポイと投げた。礼をいうでもない。
「ガラクタろくでなしゴロツキどもが見えんな。脱走でもしたのか」
八七橋は兵たちが置いている荷物を指差した。
「こんなところで脱走して、どこへ行くっていうんですか」
「降伏という逃げ道がある」
「降伏するなら少将閣下を手土産として差し出しますよ」
「ふん。そんな奴は俺が撃ち殺してやる。……腹が減ったなあ。ゴロツキども、食い物を持たずに戻ってきたら尻を蹴飛ばしてやる」
やがて、そのゴロツキどもが飯盒を手に下げて、ぞろぞろと戻ってきた。八七橋は眉をひそめて、彼らを迎えた。
「空襲があったようだが、無事か」
「ヘマはしませんや」
「お前たちじゃない。輜重の連中だ」
「へへ。お見通しですか」
「起き抜けに爆弾の雨じゃ目を覚ますどころか永遠の眠りになっちまうだろ」
「爆音!と怒鳴ってやったら、泡食って小屋や天幕から飛び出してきて、右往左往してましたがね。敵のパイロットも腕が悪いですなあ。爆弾、はずしまくりですわ。死人や重傷者は出てないと思いますぜ」
「いやいや。ありゃ死人が出てるぞ」
彼らはけらけら笑っているが、綿貫がそんな会話など興味なさげに訊いた。
「お前ら、飯は炊けたか」
「もちろん」
「じゃ、食おう。寄こせ」
飯といっても野草でカサ増しした粥だが、分配の準備を始めながら、三文が紙切れを取り出した。
「八七橋さん。こんなもの拾ったんですが」
敵機が空からまき散らす伝単(ビラ)だった。活字に飢えた日本兵はこれを拾って読み、用便後の尻拭きにも重宝する。三文は文筆家としての興味なのか、拾い集めている。
「忠誠勇武なる大日本帝国軍人に告ぐ」で始まり、「君たちは何のために戦争をしているのですか」と問いかけるのが決まり文句である。日本兵の死体と飢餓から解放された投降兵の写真が対比され、鮨や天ぷらなどの日本食をカラー印刷したものも定番である。
「何だか、いつもと違いますよ」
三文は不思議そうに首をかしげた。
太平洋戦線の日本軍連敗を報じ、「わが軍は騎士道をもって君たちを迎えます」と投降を呼びかけている点はいつも通りなのだが、末尾に「美術を理解するヤナハシ部隊の皆さんは特に歓迎いたします」と補足されているのである。伝単にこうして特定の部隊名を入れてくることも時々あるのだが、囚人部隊はわずか数名の「班」にすぎず、烈兵団の中でも員数外のはみ出し部隊なのである。
「俺たちが有名になってる。どういうことでしょうかね」
「あのブルースとかいうイギリス士官が報告したんだ。美術を理解するヤナハシ部隊というのは、あえて石像を壊さなかったことをいってるんだろう」
石像を積んだトラックは谷底へ落とさず、エンジンを破壊しただけで置いてきた。
「俺たちを特に歓迎するというのはブリティッシュ・ジョークなのか。それとも特別な理由があるのか」
八七橋は気のない口調で呟いた。今は綿貫少将を敵に差し出すことなく白骨街道を撤退する任務で頭が一杯だ。
ウクルルからフミネへの街道はイギリス軍が開通させたが、インパール方面とは違い、舗装はされておらず、道幅も三メートル程度である。その街道も大雨のために土砂崩れが多発していた。アラカン山系でも峻険な地域で、二千五百メートル級の山々が連なっている。敵に追撃される中、食料調達もせねばならず、一日かけて四、五キロしか進めないこともある。
小休止していると、雑木林の中を横切った者たちがあった。日本兵とインド人あるいはビルマ人のようだ。まるで罪人でも連行するような陰鬱な空気が木々の間に漂っている。
三文が八七橋の傍らで呟いた。
「何ですかね」
この部隊の兵たちは事件には鼻がきく。八七橋も嗅覚は誰よりも鋭い。察しはついた。
「くそぉ。カノン、一緒に来い」
大柄で人相も凶悪なカノンを呼び、八七橋は彼らのあとを追った。三文も好奇心を鼻先にぶらさげて、ついてきた。
崖沿いの斜面を進むと、三人の日本兵が二人の現地人を跪かせている。兵たちは小銃を構えていた。
「何かの祈祷でも始まるのか。そいつら通訳だろ」
八七橋が声をかけると、伍長の階級章をつけた男が睨み返した。
「もう通訳はいらん。機密保持のため処分する」
「日本軍に今さら何の機密があるのか。腹を減らした傷病兵だらけということか。そんなの、敵は先刻御承知だぞ。どこの部隊か」
「祭(十五師団)の尾本連隊だ」
「インパール戦線の一番深部で戦った部隊だな。壊滅したと聞いているが、それにしちゃ元気じゃないか」
「俺たちは後尾収容班だ」
「脱落者を収容するのではなく、無用の者を始末するのが後尾収容班の仕事か」
銃を通訳に突きつけた兵たちは目を伏せ、ふてくされている。悪びれた様子は皆無だった。
「中隊長の命令だ」
「その中隊長とやらはどこにいるか」
伍長が答えようとしないので、八七橋は短機関銃の銃口を彼の口元へ押しつけた。
「上官への口のきき方も知らんのなら、こんな口はもういらんだろ。吹っ飛ばしてやる」
伍長は語調を変えた。
「あ、あんたこそ何なんですか」
「撤退状況を視察している光機関だ」
と、八七橋は適当な嘘を吐いた。こんな下劣な連中に正直である必要はない。
「現地人宣撫工作は光機関の任務である。その工作活動をふいにする虐殺行為は軍司令部に報告せねばならん」
これは嘘でも大袈裟でもない。民族解放の戦士、天業恢弘の使徒を自負するのが中野学校、光機関である。
「中隊長はこの崖の上の野営地におります」
斜面を登らねばならない。道のすぐ脇は崖である。
「案内しろ」
通訳と兵たちの見張りに三文とカノンを残し、八七橋は伍長を小突いた。歩き出すと、伍長は愚痴るように言葉を吐いた。
「日本軍は資源確保のためにアジアに進出したのではないのですか。現地人は占領民ではないのですか」
「それでは欧米がやっていることと変わらん。日本軍は野盗の集団ではない」
しかし、大東亜共栄圏など実現すれば資源の確保は不可能になる、と大本営は考えている。軍政によって現地を締め付ける大本営の方針は、八七橋が受けた中野学校の教育とは相反するものだった。謀略や諜報といった秘密戦には悪辣非道な印象がつきものだが、その根底にはアジア諸国との友情や誠意がある。敗戦時、多くの中野出身者が復員の道を捨て、現地軍の独立運動に身を投じることになるのも、そのためである。
雑木林の中をしばらく進むと、後方で銃声が響いた。二度である。通訳を撃ったのだ。八七橋の傍らで、伍長が気まずく息をのんだ。
「この野郎っ」
八七橋は反射的に伍長を殴ろうとしたが、拳が届く前に相手は崖へ飛んだ。岩や樹木にぶつかって転がり落ちながら、一目散に逃げた。あれでは全身スリ傷だらけになるだろうし、ヘタすれば骨折だ。あきれた逃げ足の早さだった。
あの様子では尾本連隊というのもあやしいし、崖の上に中隊長がいるというのも嘘に違いない。彼らの所属部隊を探し歩く気力もなく、八七橋は憮然としながら、銃声の響いたあたりへ戻った。二人の通訳の死体が転がっている。三文とカノンは傍らに座り込んでいるが、撃った連中は姿がない。
三文が嘆息混じりに、いった。
「目を離した隙に撃ち殺して、脱兎のごとく逃げていきやがった。人間のクズというのは逃げ足が早いもんですな。常日頃から逃げてばかりの人生なんでしょう」
「わかったようなこといってるが、逃げるのを指くわえて見てたのか。お前らの銃は何のためにあるんだ?」
「八七橋さん。あいつらだって、通訳を殺せと上官か憲兵に命令されただけです。本当に悪いのはあんな下っ端じゃない」
「そうかい。大東亜共栄圏の理想は遠いな」
「八七橋さんこそ、あの伍長はどうしましたか。逃げられましたか」
「うるさい。通訳の死体は埋めてやれ。帝国陸軍の恥だ」
「へいへい。俺たちも逃げたくなるぜ」
三文とカノンはそう愚痴りながら、通訳の死体から服を脱がし始めた。八七橋は制止する気になれなかった。手伝いを呼ぶために泥ハネを上げながら歩き出した。
ウクルル・フミネの中間点となる7411高地で、八七橋は英印軍の陣地を遠望した。山頂、山腹に山岳榴弾砲を並べている。日本軍から攻撃されるおそれはないから、掩蔽もせずに堂々たるものだ。
「負け戦とはみじめなものよなあ」
日本兵はやせ衰え、二十代にして老廃の死相さえ浮かべながら、さまよい歩いているのである。歩ける者はまだいい。いたるところに日本兵の腐乱死体が転がっている山道で、倒れた者はもう立ち上がれない。襲ってくるのは銀バエのウジばかりではなく、鬼畜と化した友軍だった。
囚人部隊が土砂崩れの山道を迂回して歩いていると、半死半生の兵たちが排泄物の中に折り重なっており、その周囲を物色して回る者たちがいた。
「まだ歩けます。靴は勘弁してください」
力なく懇願する兵から数人の鬼畜たちが装備や靴を剥ぎ取っていた。
「よしよし。こっちはまだクソまみれじゃない」
「血便は赤痢だ。触るなよ」
そんな調子で、手慣れた追い剥ぎだ。八七橋たちが近づいても、チラリと一瞥しただけで、気にとめる様子もない。
「何をしているかっ」
八七橋は怒鳴ったが、彼らはその理由もわからないようだ。
「お前らこそ何じゃい」
態度も悪い。八七橋は彼らの足元へトンプソン短機関銃を連射した。硝煙の漂う中、彼は茫洋とした表情を変えないが、怒りは充分に伝わる。
「それが士官に対する態度か。まず敬礼せえ!」
「ひえっ」
男たちは無帽である。無帽の場合は上体を前傾させるのが決まりだ。だが、八七橋の剣幕に動転したのか、右手で挙手した。
「帝国陸軍にそんな敬礼があるか。さてはお前ら、偽日本兵か脱走兵だな。なら、撃ち殺してもかまうまい」
短機関銃を油断なく彼らに向けた。野盗へと変貌した敗残兵に隙を見せたら、こちらがやられる。
「何だ何だ」
雑木林の中からさらに数人が現れた。どいつもこいつも血色がいい。親玉らしいヒゲ面の軍曹がだみ声を響かせた。
「わしら、レッキとした日本兵でっせぇ。これが皇軍とやらの正体ですわ。けけけ」
「俺は光機関の山崎中尉だ」
本名をいいたくない時、八七橋が使うことになっている偽名で、光機関の仲間は承知している。
「お前ら、日本兵なら官姓名を名乗れ。師団司令部に報告し、軍法会議にかけてやる。有罪になれば、軍籍剥奪、軍人恩給もなくなり、家族も非国民扱いと知れ」
居丈高に脅しをかけたが、軍曹はふてぶてしく鼻で笑った。
「けっ。こんな異国の山中で光機関も階級も軍法会議も軍人恩給もあるかいっ。生きるか死ぬか、それだけじゃい。ほれ、こうしてる間にも、こいつ死によったわ」
靴を奪われた兵が動かなくなり、息絶えていた。身体の半分はすでにウジに覆われ、鼻や口の中にも出入りしている。